架空の杜

The journey is the reward.

動物化するポストモダンを読んで(2)

オタク系文化においては、
個々の作品はもはやその「大きな物語」の入り口の機能を果たしているにすぎない。
消費者が真に評価し、買うのはいまや設定や世界観なのだ。
とはいえ実際には、設定や世界観をそのまま作品として売ることは難しい。
したがって現実には、実際の商品は「大きな物語」であるにもかかわらず、
その断片である「小さな物語」が見せかけの作品として売られる、
という二重戦略が有効になる。大塚はこの状況を「物語消費」と名付けた。
二次創作というシミュラークルの氾濫は、その当然の結果にすぎない。
これは「ネギま!」とその周辺の消費行動を連想させます。「ネギま!」が絶大な人気を誇っているのは、背後の予測不能な「大きな物語」を感じさせながら、個々のエピソードをマンガの歴史が培ってきた様々な手法で「小さな物語」を絶えず提供しているからです。シミュラークルの原本になるかどうかがマンガとして大ヒットするかどうかの分水嶺になっていると言えると思います。「ハヤテのごとく!」も基本的には同じ構造をとっているという意味で現代のヒット作の定石を辿っているとも言えますが、私見では「ハヤテのごとく!」は大きな物語の存在を感じさせることに作者は成功してはいますが、「物語の成就」が作品の主軸でないという意味で、新しい作品だと思っています。