架空の杜

The journey is the reward.

諸悪の根源 内田樹

どうしていいかわからない、何から始めていいのかがわからない。それがいちばん困る。でも、「悪いのはこいつだ」という「諸悪の根源」の名指しがあると、話は簡単になる。「こいつ」を叩き出すために何をすればいいのかについて具体的な手立てを考えるという「当面の仕事」ができるからである。人間は何かをして、頭を使い、身体を動かしていると、何もしていないときよりも、生命力が亢進する。「これが諸悪の根源だ」という名指しが可能であるなら、どんなデタラメな境界線でも引いてみる方がまったく引かないより、やることができるだけ「まし」なのである。