架空の杜

The journey is the reward.

三十路過ぎてのアニメは程々に・・・

予め申し上げておくが私も不惑も遠くないのに、このブログのコンテンツを読んでいただければご理解いただけるように、アニメを娯楽として大いに楽しんでいる。2年ほど雇用と収入が不安定な時期が続いたので、そこから生じる不安を忘れるための手段としてアニメは格好の娯楽だった。なにしろ金がかからないし良作を選んでみている限りハズレはないので、コストパフォーマンスが高い。

アニオタが増殖したのと不況が続いたことは無関係ではない

就職氷河期の時代に社会に出てしまった気の毒な人たち。誇りの持てない仕事に渋々従事して向上心無く働いていたら三十路超えてしまった人たち。社会から疎外されてしまったのだから、当然、現実の社会を嫌悪し目を背けたい、見たいものだけを見たいという気持ちが生じるのは自然だ。そこにアニメがあった。テレビさえあれば無料で手に入るコンテンツだ。コストがかからない割に、現実の世界にない見たいものを見せてくれるので現実逃避の手段としては安易かつ最強だ。。アニオタが増殖してきたのは、経済的弱者にとって入手しやすく、かつ彼らの願望を疑似的とはいえ過剰なまでに満たしてくれるコンテンツだからだ。(当然、創り手は十分理解してマーケティングしている)

エヴァ後いったん離れた層と10年ずっとアニメを見続けた層

私は前者である。就職したのがバブル崩壊の前年だったので恵まれたスタートを切った私は、持ち前の性格の暗さと思いこみの激しさで転職は多かったが、スタートが大企業だったので、転職を繋げることができた。最初の転職をした精神的に不安定な時期にエヴァを見てアニメに覚醒したのだが、エヴァ後のアニメに琴線に触れるものが無く仕事もそれなりに忙しかったのでアニメは趣味にはならなかった。
後者が今一番コアなアニオタの主軸であろう。彼らは多分私より少しだけ年下で就職が極端に難しくなった世代の人たちだ。2chのコアユーザーであり、ネット右翼と呼ばれる人たちの大半も彼らだろう。さほど能力が劣っているわけでないのに不景気というだけで割を食っている欺瞞に対して許せないという気持ちが強い、主として団塊の世代を親とする不遇な世代だ。

私がアニメを再び見るようになった理由

なんの偶然か読んだ漫画の「魔法先生ネギま!」が非常に面白かったので、アニメも見てみたというのが発端だった。しかし、ご存じの方も多いと思うが、このアニメは酷い出来で、久々に見たアニメがこれだったから「アニメってここまで落ちていたんだ」と間違った印象をもってしまった。アニメが酷いのにアニソン周辺のムーヴメントが盛り上がっているのをみて「あいつら頭大丈夫か?」と思った。

そこでまたアニメから離れればよかったのだが、まずいことに無職の陰鬱な時代が私に襲いかかった(三十路過ぎての無職は辛い)。そこで暇つぶしに偶然見たのが「ローゼンメイデン」、不覚にも最終回で感動して涙を流してしまった。いい歳して無職に落ちぶれた自分と主人公のジュンを重ね合わせてみてしまったのだ。

涼宮ハルヒの憂鬱

このアニメは衝撃だった。ローゼンメイデン(一期限定だよ)みたいな名作は、滅多にお目にかかれないと思っていたのに、ネットでのあまりの盛り上がりに2話以降、リアルタイムで見た(無職で暇だったのだ)、アニメの舞台が青春時代を過ごした場所だったのもこのアニメに対する思い入れを加速した。そして作品の素晴らしさに素直に感動した俺は、アニメの可能性に再びエヴァの時のように過剰な期待を持つようになった。

エヴァの時はエヴァ直後に放映されたアニメに悉く失望して、すぐアニメから離れてしまった(ナデシコとか見逃したのも大きかったのかもしれない)。

わかったことは、ローゼン・ハルヒは特異的な傑作アニメではなく、最近放映されているアニメは90年代後半よりは、明らかにレベルが上がっているという事実だった。要はハズレが減っているということだ。もう一つはアニメのマーケティング対象がDVDを買うぐらいのお金は持っている大きなお友達にシフトしたことも、ハズレが減った理由だろう。(私も大きなお友達の一人だ)ハルヒの後続番組「NHKにようこそ!」は世評こそ低かったものの、個人的には大傑作だった。

らき☆すたは楽しい、でもこれは末期症状だ。

この作品は、大きなお友達専用でパロディーを多用しアニメの時代も最後の輝きの時代に入ったなと感じる。そもそもハルヒすら東浩紀先生が喝破されたようにカウンターカルチャーであった、それを更にカウンターするのだから、やはり末期症状だといってよい。ハヤテのごとく!も似た匂いがあるがハヤテは私にとって漫画版が特別な作品なので、とりあえず全保留しておく。

強引に脈略もなく纏めると

06年07年ぐらいがアニオタを対象にしたアニメビジネスのピークになると思う。現在の隆盛は「エヴァンゲリオン」に影響を受けた世代のクリエイターが制作のトップフロントに立てたことが大きいと思っている。それとマーケットの対象である団塊Jrが相対的に恵まれていることも大きいのだろう。フリーターやニートであっても、何とかリストラに遭わずに済んだ家庭のご子息はアニメを楽しんでDVDを購入するぐらいの経済的余裕はあるのだ。しかし、親に頼って現実逃避を続けたツケはいずれどこかで必ず払わなくてはならない。

ネットとアニメが世界の全てであるような錯誤した困った人たちが、人生の真の重たさに気がつくのはこれからだと思う。気がついたときに自分のスキルが「声優の名前を100人以上知っている」とか社会的有用性のないスキルだけだったらジ・エンドだ。

もちろん、これからもアニメの良作は世に出るだろうし、それを楽しむのは良いことだ。俺も楽しんでいくつもりだ。平凡な結論だが「過ぎたるは及ばざるがごとし」だ。これといって職能がないアニメ好きな三十路諸君、このまま朽ち果てないようにたまには空を見て欲しい。俺も頑張るからさ・・・

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