架空の杜

The journey is the reward.

ストレスはトリガーではあっても、うつ病の原因にはならない

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100105-OYT1T01486.htm
景気の低迷以外にも製薬会社の積極的なマーケティングで、うつ病患者が増えているという記事です。非常にクオリティの高い記事だと思います。うつ病は脳という複雑なマシンのメカニズムが不調となる器質性の病気です。ですから、それを改善する抗うつ剤が効くのです。しかし、マシンに不調が無く単に「気持ちが鬱ぐ、ストレスが辛い」のは人間の自然な心の反応であり、脳というマシンにはどこにも不調がない場合があります。この二つをどこで線引きするかは、実は精神科医でも客観的な判断は困難です。一般的に「趣味なら楽しめる」「怒りの気持ちが他者に向かう」等の症状は、本来のうつ病には見られない行為で一般的にエセうつ病(擬態うつ病)といわれています。

原因とトリガー

脳というマシンに不具合がある人はストレスがトリガーとなってうつ病になります。しかし(ここが重要なことですが)脳というマシンに不具合が無くても、ストレスによって抑うつ気分にはなります。しかし、それは過度のストレスから身を守るための自然な防御反応であってうつ病ではありません。うつ病の資質(変な言い方ですが)無い人でも、ストレスを感じて精神科医に行けば「うつ病」の診断が出ることはよくあることです。それは心の病は全て患者の自己申告によって精神科医が診断するので、診察時間が短い、診断が未熟、うつ病の診断をした方が儲かる等の理由で、脳に不調が無くストレスで参っているだけの人も「うつ病」になってしまいます。うつ病は自殺という死に繋がる病なので、誤診で本当のうつ病患者を「うつ病ではない」としてしまったら取り返しのつかないことになるので、精神科医が診断基準を甘くするのは理由のないことではありません。

本当のうつ病患者が救われる医療体制が当然望まれるが・・・

私は、エセうつ病(擬態うつ病)にはそれほど批判的ではありません。不況が長引き、公務員以外はどの職場でもストレスの起因となる過酷な労働条件が蔓延しています。そこから一時的に逃げる錦の御旗があれば、縋りたくなるのは人情というものでしょう。それに荷担して設けようとする製薬会社にモラルが必要なのはいうまでもありませんが・・・