架空の杜

The journey is the reward.

キョン=理性 ハルヒ=深層心理説

作中にフロイトの名前が出たことによって、何となく自分的な結論を導けたので書き殴っておく。

多層化しているようで実は二重レイヤーでは?

キョンハルヒの巻き起こす事象を一人称で理性的に述べていくというのが、この物語の基本構造である。読み手はキョンに感情移入して読めばいいのだろうか? 私はハルヒのハチャメチャな言動に何らかの共感を得ていた。言語化できない心の奥の何かとハルヒが重なるのである。深層心理の得体の知れ無さを純化したのが涼宮ハルヒではないのか? 容姿端麗、頭脳明晰なれど意味不明な異性というのは、彼岸であるが故に背中合わせの自分自身だとはいえないか。

ハルヒの望んだものは

未来人・宇宙人・超能力者であった。彼女の願望を具現化して現れたのが、寡黙で得体が知れないけど守ってくれる長門、妹属性・姉属性・メイド属性等萌えの権化である朝比奈、丁寧な言葉遣いをする自分を決して拒絶しない穏和な青年である古泉。望んでも手に入らないが故に、(特にオタクが)常に二次元に求めている対象そのものである。

ハルヒが真に望んだものは

分裂した理性体であるキョンである。自称、何の変哲もない普通の男子高校生だ。自分が他者の欲望の対象になるはずがないと絶望している読者(或いは作者自身も内包しているかもしれない)の化身である。

キョンが踏み込んだ未知の領域

キョンは最後まで自分がハルヒにとっての何なのかを理解できなかった。しかし読者には理性の叙述者であるキョンハルヒが侵入してくることを観察できた。そして、その侵入を拒むなという声にならない声を境目から出した、それに応えて、キョンの唇とハルヒの唇が接触し理性と理性外の絶対的他者が融合した、そこから生まれるカタルシス!、これは紛うことなく物語の力だ。

庵野秀明への谷川流の回答

理性の叙述者であり観察者であったキョンハルヒのポニーテールを褒めた、そして彼の視線がハルヒの後頭部に止まったところで曲が流れ、後日談が始まる。見事なエンディングだ。私がこの作品がエヴァの問いに対してちゃんと返答した最初の作品だと思ったのは、メタファーとして同じ物語の構造をとりながら、一歩踏み込んで二次元世界の耽溺者にポジティヴなメッセージを残すことに成功したと思えるからである。