架空の杜

The journey is the reward.

Archives - 内田樹の研究室


私の結論は、「男を騙すのはまことに簡単」ということである。
せっかくなので、宴会に参加されなかった一般読者のかたにも
知見の一端をご紹介しておきたい。
男が「弱い」ポイントは「才能」のひとことである。
「あなたには才能があるわ。他の人には見えなくても、私にはわかるの」
と上目遣い斜め45度の視線プラス「かなぴょんのポーズ」でまず80%
の男は落ちると断言してよろしいであろう。
「才能」のひとことであえなく陥落する男たちは「自分には才能があるは
ずなのだが、世間のひとが認めてくれない」という事実にフラストレーシ
ョンを抱いているからこそ、このひとことで籠絡されるわけであるが、
そのような「自己評価」と「外部評価」のずれがある場合、高い確率で
外部評価の方が適切であるということが難点と言えば難点である。

「才能」の甘言をもって陥落しない20%の男というのは、
「自分には才能がないはずなので、この女は嘘をついている」と考える人間か、
「自分にはあまりに才能がありすぎるからこそ世人の評価になじまないのであって
こんな女ごときに私の才能がわかるはずがない」と考える人間のいずれかであるが
前者は猜疑心が強すぎ、後者はバカなのでいずれも配偶者とするには足りないので
無視してよろしいのである。

ただし「才能」路線で攻めた場合、これはあくまで「自己評価と外部評価に落差が
あること」が条件となっており、実際にはある程度社会的経験を積んで、適度に
「練れてきた」男の中には「自分のバカさ」についてかなり適切な自己評価を下し
ているものがおり、その場合は、はかばかしい反応を示さないことがある。

私は女性どころか母親にさえ「おまえには才能がない」という無言のプレッシャーを受けて育ってきたので内田先生の言葉は腑に落ちます。経験からいうと魅力的な女性(特に美に才能がある人と高学歴の女性)というのは大抵非常識なほどプライドが強いので、男を褒めること=己を蔑むこと、と考えている節があるように思います。綺麗な人なのに三十路独身の人はたいていこのパターンですね。