架空の杜

The journey is the reward.

Archives - 内田樹の研究室

父親は疲れ切って夜遅く帰ってきて、会社から与えられた苦役に耐えている様子を全身で表現しているが、それこそが彼が真の労働者であり、家産を形成していることのゆるがぬ証拠である。
母はそのような不機嫌な人物を配偶者として受け容れている苦役に耐え、私のような手間のかかる子どもの養育者である苦役に耐えていることを家事労働のメインの仕事としている。
両親は私にさまざまな苦役に耐えることを要求するが、それはそれが私にできる唯一の労働だからなのである。
苦役に耐えること、他人がおしつける不快に耐えること、それが労働の始原的形態なのだ。
という結論に子どもたちは導かれる。
そして、子どもたちは「忍耐」という貨幣単位をすべての価値の基本的な度量衡に採用することになる。

細かく感想を言うと色々差し障りがありそうなのですが、目から鱗が落ちました。「忍耐の代価としての賃金」という価値観が自分の中で大きいのは認めざるを得ないです。