架空の杜

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鋼の錬金術師 全27巻一気読み感想

鋼の錬金術師 27 (ガンガンコミックス)

鋼の錬金術師 27 (ガンガンコミックス)

サンデー連載の「銀の匙」が面白いので全巻大人買いしても間違いないだろうと確信して6500円で買いました。最近はアマゾンで中古を全巻買いできるので便利です
5000万部を売り切る大ヒット作にもかかわらず読んでいなかったのは、個人的に「努力・友情・勝利+ファンタジー」のジャンプが得意としている作品群が肌に合わないからです。
この作品はいろいろな角度から分析できると思いますが、一番作品として特徴的なのは「作品全体に通底する強い倫理観がある」ということです。「努力・友情・勝利」を押さえていればいいんだろといった感じの作品が多い中、大手出版社系ではないところから、これだけの冊数を売り切った作品の底力はここに源泉があると思います。

「敵を討つ」を否定すること


25巻でマスタングが親友の仇討ちをまさに達成しようとエンヴィーにトドメを刺そうとするとき仲間から制止を希求されます。意趣返しの爽快感をキャラに達成させなかったところに、この作品の真骨頂があるような気がしました。
一巻の小さなエピソードの小悪人が最終刊まで描かれたり、雑魚として一般的なマンガならやっつけられて終わりの敵の手下が意外な活躍を見せたりと、陳腐な言い方ですけど作品全体に「慈愛が溢れている」感じです。

生命の等価交換

全ての生命体は他の生命体を食して生きています。この作品は他者の命を蔑ろにして己のパワーを増大させる側を「悪」、他者との共生愛を力の源泉としているエルリック兄弟を「善」として描いています。この作品のクライマックスは現代社会に一番欠けている共生愛が突き抜けて大団円に至ります。こういう作品が5000万部も売れるってとても健全だし、もっと肯定的に社会を見たいとさえ思わされました。間違いなく大傑作です。