基本的に演歌以外の日本のポピュラーソングは、英語圏で進化したロックやポップミュージックと日本語の相性の悪さをどう処理するかの試行錯誤の連続であった。そして、いくつかの解決手法が生み出された。
諦めて曲の要所を英語で歌う
これは具体例を挙げるまでもなく日本のポップ・ロックの常套手法であった。英語コンプレックス丸出しなので、早くから洋楽が好きだった私には極めて格好悪く感じた。それは今でも変わらない。ゴダイゴとかは好きだけどね。
ゴダイゴ 銀河鉄道999
日本語の発音を英語風に崩してそれを自分の芸風にする。
この筆頭格はサザンの桑田佳祐、先日、ご逝去された忌野清志郎さんあたりでしょうか?これは芸風として早い者勝ちみたいなところがあったので、安易に真似をすると非常に格好悪い。
日本語の響きを崩さずに詩の物語性よりメロディマッチングを優先する。
安易に英語を歌詞に混ぜるのは格好悪いという意識を持ったミュージシャン。スピッツ・THE BOOMあたりが筆頭。スピッツの「ロビンソン」なんて歌詞の中にはロビンソンさんは居ません。それでも詩として美しいのは草野正宗が天才だからです。同じ意味で宮沢和史も天才です。
スピッツ ロビンソン
ブルーハーツの斬新さ
なんといっても巻き舌で歌わずに、日本語を日本語らしく誇らしく歌いながら、ロック・パンクの王道を感じさせた点でしょう。日本語でライミング(韻を踏む)を意識的にして成功したのも凄いと思う。
YouTube
世界中に定められたどんな記念日なんかより
あなたが生きている今日がどんなに素晴らしいだろう
世界中に建てられてるどんな記念碑なんかより
あなたが生きている今日はどんなに意味があるだろう
見えない自由がほしくて、見えない銃をうちまくる
語尾の母音だけ合わせて韻を踏んだつもりになっている作詞が今でも多い中で、80年代にこの作詞をした音楽史的な意義はとても大きいと思う。(曲名は「Train Train」だけど)
宇多田ヒカル
こういう思い込みが大学生時代に確立したので、邦楽なのに曲名が英語というだけで聞かず嫌いになった私も相当、偏屈だったと思う。宇多田ヒカルはそういう英語コンプレックスの最終形態という感じすらした。英語に堪能な彼女なら曲名に歌詞に横文字が入ってもクールじゃね? という日本人の潜在意識と彼女がスターになった理由は全く無関係ではないだろう。ちなみに宇多田ヒカルは勢いに乗ってアメリカ進出をしたが、相手にされなかった。宇多田ヒカルが、あくまでも英語が得意な日本人に過ぎないというのは、下記のピーターバラカン氏の批判が急所を突いている。
アメリカ人と競作した曲以外は、全くグルーヴ感がない。
つまり、英語の歌詞では大前提である韻を踏んでいない。
もしくは韻の踏み方が足りない。あえて韻を踏まない効果
というのもあるにはあるのですが、彼女の詞はそうじゃない。言葉を詰め込みすぎて、歌詞カードを見ないと何を歌っているかも
分からないところも多い。リズムがぎくしゃくして不自然な抑揚は問題。いくら英語が上手いからといってネイティヴではないのに
なぜネイティヴチェックを受けないのでしょうか?
間違っていないかどうかを確認する意思さえ持たないというのは、
僕には非常に傲慢にうつる。彼女の周りには彼女に向かって「これ間違っているよ」
といえる立場の人がいなかったんでしょうね。
アメリカで出すのなら、アメリカ人の音楽好きにも、
かっこいいと思わせるべく最善の努力をすべきと僕は思います。
そのへんの責任のなさが、むしろ非常に格好悪いと感じますね。
宇多田ヒカルは捲土重来を期して、また米国マーケット向けにアルバムを出したようですが、バラカン氏の指摘した点は直っているのかな。(興味ないけど)
Don't say "lazy"
以前なら毛嫌いしていた・曲名が英語で歌詞も出だしから英語なので聞かず嫌いになりそうなものだが、アニソンだしそういう先入観ブロックが解除されていたせいか、素直によい曲だと思った。一番クールだと思ったのは英語を織り交ぜながら、コンプレックスが微塵も感じられない点だ。サビに英語を使うのではなく曲頭で使う点とか、日本語の韻の踏み方も四文字熟語を駆使したりして巧みである。でも一番のポイントは曲のキモである箇所を喋るような言葉を詰めこんで、日本語のぎこちなさを逆に強調して格好良く聴かせている点である。
Please don't say“You are lazy”
だって本当はcrazy
白鳥達はそう
見えないとこでバタ足するんです
本能に従順 忠実 翻弄も重々承知
前途洋々だし…
だからたまに休憩しちゃうんです
グタグタ書いたけど、要は俺はこの曲が好きなんだ!
というオチです(笑)
参考:http://goyaku.seesaa.net/article/102147090.html
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