- 作者: 宇野功芳:中野雄,?島章恭
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/11/19
- メディア: 新書
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暇つぶしの愛読書の筆頭本の新判が出た。僕はとにかく評論対象そのものよりも、筆の立つ評論家が好きなのである。
オーディオ評論家では故長岡鉄男氏、自動車評論家では徳大寺有恒氏,そしてクラシック評論家では宇野巧芳氏である。
兎にも角にもクラシック音楽を評論させたら、宇野巧芳氏ほど筆の立つ人はいない。彼の出す新書が尽くベストセラーになるものだから、遂に彼はレコード芸術の看板評論家となってしまったぐらいである。ちなみに本業は合唱指揮者。
彼の書く文章を読むと、なんとクラシック音楽とは素晴らしいものかと想像が盲進邁進する。
しかしである。彼の推薦盤は僕とは極端に相性が悪いのだ。今では彼が絶賛するだけで買うのを尻込みしてしまうぐらいだ。
この書籍は10年前に出た書籍の改訂版であるが、宇野氏自身は旧著の記述をそのままにしてある箇所が目立つ。一方、宇野シンパといわれる共著者はベストセラー間違い無しのこの書籍の改訂ということで、非常に張り切っておりほぼ全てを書き直してある。
面白いのは宇野氏の弟子ともいえる福島氏で旧著では宇野氏の評価をなぞらえるおもしろみのない内容だったのに、今回の改訂では俄然我を出して師匠が絶賛する演奏家をバッサリ切ったり、旧著では嫌いと書いてしまったが今では好きになってしまいました、などと変貌ぶりに驚く。
この手の本が好きな割に、あまり手元に世評の高いCDは持っていない。旧い名盤はモノラルだったりして、音が悪すぎるのである。
それに僕がクラシックに求めるのは「癒し」と己のデモーニッシュな心情を映し出す鏡であり、指揮者の人格とか演奏哲学とかには興味がないからである。