架空の杜

The journey is the reward.

マンガへの愛 瀬戸際ギャグ

読もう!コミックビーム  ISBN4-75771767-9
つぶれるつぶれるとの噂(うわさ)が絶えないマンガ雑誌コミックビーム」の売り上げ向上を図り、同じ会社の「週刊ファミ通」誌上に掲載されたPR4コマが、驚きの単行本化。

 面白いのか、そんなもん? と普通は思う。ところがコレが面白いのだ。前半こそ自虐と諧謔(かいぎゃく)に満ちたビーム購読推奨マンガを展開するも、後半はほとんどビームとは関係ない随想風のネタばかり。ようするに単なる宣伝マンガではなく、独立した作品として十分鑑賞に堪えるのだ。

 作者は『幽玄漫玉日記』などでカルトな人気を誇るワビサビ系(?)ギャグ作家。その持ち味が、本書においても遺憾なく発揮されている。

 こういう味なマンガを描く作家が連載していることが、すなわち「コミックビーム」の魅力でもある。前衛的で情熱的で、かつリリカル。手塚治虫文化賞作『弥次喜多 in DEEP』(しりあがり寿)や、松尾スズキ監督で映画化の『恋の門』(羽生生純)が連載されていたのもビームであるという事実が、同誌の慧眼(けいがん)と豊饒(ほうじょう)を雄弁に物語る。

 雑誌がつぶれる前に発行元が角川グループに買収されたのは皮肉だが、同誌のマンガへの愛と情熱は不変と信じたい。本書と同時にビーム100号の巻頭言も読まれたし。

 <南信長(ライター)>