架空の杜

The journey is the reward.

スキップ倶楽部 桑田乃梨子

創作的な行き詰まりと愛猫の死もあって活動量が大幅に減った桑田先生の新刊です。桑田テンプレートの中でも一番定番の「気弱な男性主人公」をたてたことで安定した作品となっています。前半デッサンが微妙に崩れた絵が散見されるのですが、衰えというより猫の不具合が影響しているのかもしれません。中盤以降は持ち直しています。

テンプレート通りの内容のようで、近年の作品の中ではアタマひとつ抜けて出来がいいかんじがします。メインヒロイン候補が二人いてどっちつかずなところが新しいのと、内向的なヒロインというのも珍しい。そしてテンプレート的な傍若無人の先輩キャラに裏設定を持ってくるところなど、ちょっとした驚きです。

近年の桑田作品の最大の欠点は「設定の雑さと物語の閉じ方の稚拙さ」という致命的なものでした。物語の閉じ方はまだこれからですが、設定のこれまでの雑さという欠点を逆手にとって読者を驚かせるとは、桑田先生はやはりただ者ではありません。愛猫にょろり号がなくなっても、頑張って欲しいです。