架空の杜

The journey is the reward.

イエスタデイをうたって 竜頭蛇尾の最終巻

八巻までは名作だった。物語をまとめにかかってからグダグダになった。
物語の基本構造は一途に年下から想われた三人が、最後に年下を選ぶというだけ、正にそれだけのお話しだった。一途に想う方はぶれないからいいのだけれども、リクオとシナコの過度の優柔不断の種明かしは、明らかに失敗している。それらは、一生懸命キャラの口から語られてはいるけれども、結局それらしい理由を物語の終焉のためだけに、捻り出した感じが拭えない。
人の心はファジーで腑に落ちなくても全然構わないし、その描写こそがこの作品の魅力ではあった。しかし物語を閉じさせるために、設定の瑕疵が全部表出してしまったという点で、創作の典型的な失敗ケースとして負のお手本にはなるかもしれない。巻末に弁明じみた著者インタビューが載っていてるのも興ざめだ。