架空の杜

The journey is the reward.

Archives - 内田樹の研究室

「私は私が書いている言葉の主人ではない。むしろ言葉が私の主人なのだ。」
「言葉の力」とはそれを思い知る経験のことである。
早熟の書き手なら十代でそれを経験する。
「言葉の力」には言葉に対する畏怖と欲望、不安と信頼とがないまぜになっている。
言葉を単なる主体の思考や美的感懐の表現手段だと考えている人々は「言葉の力」についに無縁な人々である。
「言葉は感情的で、残酷で、ときに無力だ」というようなことを言える人間は、彼のイデオロギーやドクサや民族誌的偏見がその当の言語によってあからさまに表現されているという事実に気づいていない。