架空の杜

The journey is the reward.

アリの集団の生産性

秀才ばかりの集団では、組織の生産性は低下する――。大阪府立大大
学院工学研究科の西森拓・助教授らがアリの行動をコンピューターで
再現したら、そんな結果が出た。エサ集めの下手なアリが集団内にい
た方が、優秀なアリだけよりもたくさんエサが集まった。札幌市で開
かれた日本動物行動学会で三十一日、発表した。

アリはエサを見つけると、巣への帰り道に目印になる物質(フェロモ
ン)を塗りつけ、他のアリはこの目印を触角でたどってエサ場に向か
う。

西森さんらは、目印に敏感なアリと感度が悪いアリの行動をコンピュ
ーターで再現。すると、感度の悪いアリがいる集団の方が、エサを効
率よく集めた。

優秀なアリは目印を忠実に追うため、エサを効率よく集めるが、目印
固執するあまり、新たなエサは発見しにくかった。一方、鈍いアリ
はうろうろすることで、エサを発見するチャンスが高まるらしい。た
だ、実際にエサを集めるのはほとんどが秀才アリだった。

西森さんは「特に状況の変化が著しいときには、人間でも手堅い秀才
ばかりでは駄目なのかもしれない」と話している。

読売新聞 2003. 11. 01 東京夕刊 P18