はい、「近年でもかなり悪い状態にある」と言ってよいと思います。
ただし、より正確には「悪いリーダーが増えたから危険」というより、危険なリーダーを止める制度・世論・国際秩序のブレーキが弱くなっている、という見方が妥当です。
いま危険度が高いと言える理由
政治学的に見ると、危険なのは次の3つが重なる時です。
- 強い権力欲・被害者意識・攻撃性を持つリーダー
- 議会・司法・メディア・官僚制・党内抑制などのブレーキが弱い
- 外部環境が不安定で、強硬策が支持を得やすい
現在の国際情勢は、この3条件がかなり多くの地域で同時発生しています。
Freedom Houseの2026年版では、世界の自由度は20年連続で低下し、2025年には54カ国で政治的権利・市民的自由が悪化、改善したのは35カ国だったとされています。これは「一部の独裁国だけの問題」ではなく、選挙で選ばれた指導者が制度を内側から弱めるケースも含まれます。(Freedom House)
V-Demの2026年版も、民主化している国は世界の約1割にとどまり、むしろ「民主主義の後退」「権威主義化」が主要な潮流であることを示しています。特に問題なのは、クーデターだけでなく、選挙で選ばれた政権が少しずつ司法・メディア・選挙制度・行政機構を支配していくタイプの後退です。(V-Dem)
「リーダーの性格」より「ブレーキの故障」が重要
ご指摘の仮説はかなり筋がよいと思います。 ただし、政治学ではリーダー個人の性格を単独原因にするより、その人物が暴走できる構造があるかを重視します。
たとえば、同じように自己中心的・攻撃的・陰謀論的・権威主義的な傾向を持つ政治家でも、
- 独立した司法が強い
- メディアが自由に批判できる
- 与党内に異論を言える勢力がある
- 軍・警察・官僚機構が個人ではなく制度に忠誠を持つ
- 選挙で平和的に交代できる
という条件が残っていれば、被害は限定されます。
逆に、これらが弱いと、リーダーの気質がそのまま国家行動になってしまいます。ここが非常に危ない。
国際秩序側のブレーキも弱くなっている
国内制度だけでなく、国際的な抑制も弱まっています。
Global Peace Index 2025は、世界の平和度が2014年以降悪化傾向にあり、2024年時点で国家が関与する紛争が59件と、第二次世界大戦後最多水準だとしています。また、紛争が国際化し、78カ国が国外の紛争に関与しているとも指摘しています。(Vision of Humanity)
これは、単に「戦争が多い」というだけではありません。 かつてなら大国間の調整、国際機関、同盟、経済的相互依存、世論の圧力などが一定の抑止力になっていました。しかし今は、
- 大国間の信頼が低い
- 国連安保理が機能しにくい
- 経済制裁や国際法の威信が相対的に低下
- 核保有国・準核保有国の威嚇が増える
- SNSやプロパガンダで国内世論を煽りやすい
- 「力で現状変更しても得をする」という誘惑が増える
という状況になっています。
ミュンヘン安全保障会議の2026年報告も、戦後の米国主導の国際秩序が単に「劣化」しているのではなく、より積極的に「破壊されつつある」という問題意識を示しています。(securityconference.org)
なので、かなり危険な時代ではある
結論としては、はい、現在の国際情勢は近年でもかなり悪い状態にあると見てよいと思います。
ただし、第二次世界大戦直前や冷戦最危機期と単純比較して「史上最悪」とまでは言い切れません。核抑止、経済的相互依存、国際世論、情報公開、地域機構など、まだ残っているブレーキもあります。
しかし問題は、いまの危険がかなり複合的だということです。
国内では民主主義のブレーキが弱まり、国際社会では大国間のブレーキが弱まり、情報空間では理性的な合意形成のブレーキが弱まっている。 この三重の劣化が、現在の不穏さの核心だと思います。
一言で言うなら
「悪いリーダーを排除すれば解決する」ほど単純ではない。 でも、危険な気質を持つリーダーが、制度の弱い国家やブレーキの壊れた国際環境に置かれると、世界全体のリスクは跳ね上がる。
そして現在は、その条件が複数の大国・中堅国・地域紛争で同時にそろいつつある。 その意味では、かなり警戒すべき時代に入っていると思います。