Oasisのサウンドは90年代特有のラウドなギターロックであり、一聴しただけではビートルズの音楽と直接的に結びつかないと感じる方は少なくありません。
それでもOasisを語る上でビートルズが必ず引き合いに出されるのには、単なる「サウンドの模倣」以上に、いくつかの深い理由があります。
- 楽曲の「骨格」にあるソングライティングの影響
Oasisの音楽をギターの轟音やリアムのボーカルといった「表面」から少し離れ、メロディやコード進行といった「骨格」に注目すると、ビートルズの影響が色濃く見えてきます。
普遍的で美しいメロディ: ノエル・ギャラガーが書く曲の最大の特長は、誰の心にも響くキャッチーで普遍的なメロディです。この「良いメロディこそが正義」という姿勢は、まさにビートルズ、特にポール・マッカートニーが得意としたソングライティングの哲学そのものです。分厚いギターサウンドに埋もれがちですが、Oasisの曲をアコースティックギター1本で弾き語りすると、そのメロディの美しさが際立ち、ビートルズとの共通性がよく分かります。
シンプルで感動的なコード進行: ビートルズが確立した、シンプルながらも少し切ない響きを持つコード進行(マイナーコードの効果的な使用など)は、Oasisの多くの名曲(例:「Wonderwall」「Don't Look Back in Anger」)で採用されています。
- 意図的なオマージュと引用
Oasisは、ビートルズへのリスペクトを隠すことなく、楽曲やアートワークに意図的にその要素を散りばめています。
サウンドの引用:
「Don't Look Back in Anger」のピアノのイントロは、ジョン・レノンの「Imagine」を明らかに意識しています。
「Wonderwall」というタイトルは、ジョージ・ハリスンのソロアルバム『Wonderwall Music』から取られています。
「Go Let It Out」で使われているメロトロン(テープを使ったキーボード)のフルートの音は、ビートルズの「Strawberry Fields Forever」を彷彿とさせます。
ライブでのカバー: ライブの定番曲として、ビートルズのサイケデリックな名曲「I Am the Walrus」を頻繁にカバーしていました。これは彼らが自身のルーツをどこに見ているかを雄弁に物語っています。
アートワーク: デビューアルバム『Definitely Maybe』のジャケットに映るテレビ画面には、ジョージ・ハリスンの写真が飾られています。
- バンドとしての姿勢と物語性
音楽性だけでなく、バンドとしてのあり方そのものがビートルズと比較されます。
労働者階級のヒーロー: ビートルズがリヴァプールから現れたように、Oasisもマンチェスターの労働者階級出身です。彼らが国民的なバンドへと成り上がっていくストーリーは、多くのイギリス人にとって「ビートルズの再来」を思わせるものでした。
兄弟の関係性: ソングライターの兄(ノエル)と、カリスマ的なボーカリストの弟(リアム)という関係性は、ビートルズにおけるジョン・レノンとポール・マッカートニーの創造的な緊張関係としばしば比較されます。
ビッグマウスと野心: 「俺たちがビートルズを超える」と公言してはばからない不遜な態度は、初期のジョン・レノンが持っていた反骨精神や自信と通じるものがあり、メディアの格好の的となりました。これは彼らのセルフプロデュースの一環でもありました。
- 時代背景とメディアによる位置づけ
90年代半ばのイギリスでは、「ブリットポップ」という音楽ムーブメントが巻き起こりました。これはアメリカのグランジへの対抗として、イギリス的な音楽を取り戻そうという動きであり、多くのバンドが60年代の英国音楽をルーツとしていました。 その中で、Oasisはメディアによって「ビートルズの正統な後継者」として位置づけられました。ライバルとされたBlurがキンクスやスモール・フェイセズといったバンドと比較されたのとは対照的です。
まとめ
Oasisの音楽は、Sex Pistolsのパンク的なエネルギーやThe Stone Rosesのグルーヴなど、ビートルズ以外の影響ももちろん受けています。しかし、
音楽の核となるメロディの作り方
リスペクトからくる意図的な引用
バンドとしての物語性
といった点で、ビートルズのDNAを最も色濃く受け継いだバンドとして認識されています。
ご質問者様が感じられたように、サウンドの質感自体は異なりますが、その音楽の「魂」や「設計思想」の部分に、ビートルズとの強い繋がりを見出すことができるのです。