架空の杜

人生とは連続する刹那である

のだめカンタービレ

のだめカンタービレ(20) (KC KISS)

のだめカンタービレ(20) (KC KISS)

アニメ化やドラマ化の対象とされたのは野田恵と千秋真一が共に渡欧するまでだった。しかし、この作品の神髄は渡欧後にある。それにしても二ノ宮和子先生がここまで深い物語を書けるとは、恐ろしく意外だった。

千秋がのだめに惹かれる理由

音楽の神への畏敬と、のだめの不可解さは繋がっている。この作品が際だっているのは千秋という天才エリートが、のだめに惹かれることがどの読者にとっても不可解でない、ごく自然なこととして完璧に描写されている点だろう。千秋の内面はかなり深く描写されているのに、主人公であるのだめの不可解さは、作者が女性であるにもかかわらず、その謎解きは描かれていない。漫画という音の聞こえない媒体の限界を逆手にとって、読者の内面に美しい音楽を喚起させるところが、この大ヒット作品のポイントだろう。

愛すべきキャラたち

舞台を欧州に移してからの登場人物が魅力的だ。特に黒木君とロシア人留学生ターニャの関係性を描いたサブストーリーは大好きだ。留学生活になじめないネクラな黒木と、表層的には浅はかな俗物のように描かれているターニャが互いの深層にある心の美しさに惹かれあう過程の描写は特筆に値する。