架空の杜

The journey is the reward.

第14話感想 呪縛からの解放

アニメの最終話も素晴らしい出来でした(^^)
やっぱりアニメで結末を知った方が感動が深かったかもなぁ。
物語の骨格が古典的な「ボーイ・ミーツ・ガール」でありながら、諸設定が極めて斬新であるという、創作技法の巧みさに素直に感動しました。

虚構内虚構が暗喩するもの

男の子にとっての女の子は「ワケの分からない存在」である。そのワケの分から無さをSF要素で目に見える形でメタとして表現したのがこの作品である。

キャラクター進化の現在形

宇宙人,長門有希綾波レイ的な、超能力者,古泉一樹腐女子さま御用達の、未来人,朝比奈みくるは萌えの集大成のような現代サブカルチャーが生んだキャラクターの現在進行系を示している。品揃えに抜かりはありませんといったところか。ヲタクカルチャーにおいてさんざん消費され尽くしてきたキャラをメタとして描いている。

カウンターカルチャーがメインストリームに

東浩紀先生が述べているように、この作品は格好良くいえば「カウンターカルチャー」である。分かりやすくいえば「ヲタクを揶揄している」のである。揶揄している作品がメインになってしまうところに創り手側の業の深さというか、それすら消費してしまうヲタク達の貪欲さというか、著しいキャズムである。

メタメタ

小説・アニメはそれ自体が虚構を表現しているのでメタ。作品内では一貫してキョンの一人称で語られているので、涼宮ハルヒやSOS団のメンバーも外部である。しかも、俺と他者ではなく、俺とハルヒと他者である。基本は語り手であるキョンハルヒのお話であり、長門・古泉・みくるは作品内でのメタである。涼宮ハルヒはエキセントリックな言動をとるが彼女自体は作品内メタの存在に気がついていない、超常現象を望みながら信じていないのである。

見事な結末

最終話で作品内メタの世界に「夢というメタ世界の中にて」キョンハルヒと時空を共有する。メタの世界に放り込まれて戸惑いながらも、次第にワクワクしだしたハルヒキョンはSOS団のある現実に戻ろうという、キョンの言葉に困惑するハルヒに物理的な力の行使、これは暗喩で、目覚めたキョンが自己嫌悪に陥るのも分かる。翌日学校で出会ったハルヒの髪型はキョンが望んだものだった。

エヴァンゲリオンの呪縛からの開放

デビュー作をアニメ化させてしまった谷川流の創作上のモチーフはやはりエヴァンゲリオンだった。エキセントリックで傍若無人ハルヒが深層で望んでいたのは、心を許した普通の男性であるキョンとの新しい世界だった。望んだ世界の形は違うが碇シンジが「他人の恐怖の無い世界」を望んで、それで世界を再構築させようとしてしまったことと通底している。ハルヒの潜在願望の具現化を阻止させたのは、ハルヒ自身の意志ではなく、キョンのキスであった。男の子にとっての最大の他者である女の子の象徴として描かれている涼宮ハルヒを守ったのは「男の子的論理思考を持つキョンの勇気であった」というのは、何とも清々しく新鮮な結末だ。多くのクリエイターが乗り越えられなかったか無視してたエヴァの投げかけた問題に一つの決着がついた。ライトノベルの応募作の中に答えがあったのである。谷川流という作家を我々に導いてくれた関係者と素晴らしいアニメーションを創り上げた京都アニメーションの偉業は伝説となるだろう。

あなたの望む世界は、他者を経由しなければ手に入れることは出来ない
ハルヒ深層心理説
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